



三重大学 工学部 分子素材工学科 卒業
会社勤務2年(自動車部品などの鍛造型を作る会社の技術課)
2008年4月 DECOBI 研修生として入学

大学では有機磁性体のことを研究していました。就職に関して特にこだわりがあったわけではなく、卒業研究が忙しかったので、なかなか就職活動に専念できませんでした。いくつかの会社の採用試験を受け、その中で採用された会社に、何となく就職してしまったという感じでした。鍛造型を作る会社の技術課に配属され、現場の仕事をやらせてもらい、いろんな機械を使って鍛造型の製造をしていました。
しかし、仕事の内容は入社前に自分が想像していたものと違い、あまり魅力が感じられず、入社してすぐに、失敗したなと感じました。鍛造型は、基本的には機械が加工するので、人が行うのは主にプログラムを組むことと、材料を段取りすることです。しかも鍛造型は、あくまでもいろんな部品を製造するための「型」であって、それ自体は一般の人の目に触れることはありませんし、最終的に、壊れたり、必要なくなればが遺棄されてしまうものです。
ものづくりには元々興味があったのですが、この会社でのものづくりは、自分で「作っている」という実感が少なく、もっと自分の手でものづくりをしたいという思いが強くなりました。そして、自分が作ったものを、日常で使ってもらえて、ずっと先まで残っていくようなものづくりをしたいと思いました。

光を透過することが魅力の一つであると思います。自分の身のまわりの生活空間を見た時に、ガラスでできたものが多いことに気付きました。特に意識していたわけではなかったのですが、無意識のうちにガラスでできた製品を好んで使っていたのだと思いました。それでますますガラスに魅力を感じて、実際に生活空間の中で使えるものを、ガラスで作ってみたいと思うようになりました。

会社に勤めていたころ、最初は趣味として、月に2回、土曜日に、バーナーワークの教室に通っていました。実際にガラスでものを作ってみると、将来的にはガラスの仕事をしてみたいと思うようになり、インターネットを使って、本格的にガラスを学べる学校を探しました。
学校ではなくて、いきなりガラス工房や体験工房のようなところで、アシスタントなどをして、働きながら技術を身につける方法もありましたが、通っていたカルチャー教室の先生から、まったくの初心者でそういうところに行ったとしても、本当に単純な仕事しかできないだろうし、自分の練習時間をとるのも難しく、短期間では技術を習得できないだろう、との助言をいただいたので、しっかりと教育機関で学ぶことにしました。
いくつかの教育機関から資料を取り寄せたり、問い合わせたりして、より良いところを検討しました。金銭的な都合もあるので、短期間、1年で学べるところ、そして一番重要視したのは、1年間でより高い技術を身につけられるカリキュラムかどうかということです。それぞれの教育機関に、1年間のコースのカリキュラムを詳しく聞いてみると、ほとんどの所が、1年間かけて、吹きガラス以外にも、ガラスのいろんな加工技術や技法を、まんべんなく学んでいくというカリキュラムでした。これでは1年間で高い技術を身につけるのは難しいと感じました。
そのなかでDECOBIの研修生のコースは、カリキュラムを講師と相談しながら決められるので、自由度が高いなと感じたのです。 少人数制で、実習中心に学ぶことができるので、吹きならば吹きとポイントをしぼれば、きっと高い技術を身につけられると思いました。
DECOBIの体験入学にも参加し、以前から興味のあった吹きガラスの体験をしました。そこでコップを作ってみて、ますます吹きガラスに魅力を感じるようになり、施設も見学して、職員の方の話も聞いて、この環境であれば、しっかりとした技術を身につけることができると思い、吹きガラスを学ぼうと思いました。それと、DECOBIには寮があるのも助かりました。生活費を安く抑えられるということは勿論、同じ敷地の中に寮があるというのは、通学に時間を取られずとても便利です。また、資金計画が立てやすいのもよかったです。入学金、授業料はもちろんとして、寮費や給食費といったものもあらかじめわかっているので、生活費も含めてトータルで、資金計画を立てる材料になりました。

学校の近くにコンビニもないし、大きなスーパーも少し離れているし、それまでの街の生活と比べると心配もありましたが、食事は学食で給食ですし、どうしても困るということはないです。期待どおり、ものづくりにも集中して取り組むことができて、学校生活や寮生活も楽しんでいます。
僕とおなじ研修生は、成人している学生が多いのですが、本科の学生は高校卒業してすぐの10代の学生が多く、最初は年の離れた学生と、うまくやっていけるか不安でしたが、年上だからと言って特別視するとこなく接してくれるので、年の差関係なく仲良くしています。寮の中でも、ロビーで一緒に遊んだり話をしたりします。所属しているガラス工房では、春に桜で有名な高遠へ行って、みんなでお花見もしました。

入学してからこれまでに、いくつかの課題に取り組みました。最初はコップを作りました。まず、先生が全体の流れを説明してくださって、さらに実際にデモンストレーションを交えながら説明をしてくださいます。あとは、ひたすら自分で練習を重ねるのですが、なかなか簡単にはいきません。どうしてもうまくいかない部分は、質問をしてアドバイスをもらうようにしています。適当な頃合いで、次の課題に進みます。コップの次に、ボウル、シリンダー、コーンといった形状の課題に取り組んで、さらに台、取っ手、色ガラスといった装飾の課題に取り組みました。
当たり前ですけど、実際にやってみると、どの課題も難しいです。今は駄作がどんどん増えています。やり方がわかって、形にはなるけれども、きれいに作れるというところまではまだまだです。 本当に、一口に吹きガラスといっても、思った以上にいろんな技法があり、驚いています。
吹きガラスの実習では、実際に自分が吹ける時間は限られているので、なるべく時間を有効に使うようにしています。また、吹きガラスの作業は一人ではできないため、自分が吹く時は、まわりの人に手伝ってもらうし、自分が吹かない時も、人の手伝いをしたりします。ガラス工房には研修生がもう一人いるので、一緒に組んでやることが多いです。
自分が吹くのはもちろんですが、他の人が吹いているのを見るのも勉強になりますし、特に講師の加倉井先生のデモンストレーションには圧倒されます。自分が実際に吹きガラスをやるようになってみて、先生の技術の高さが、より感じられるようになっています。加倉井先生は、技術が高いということはもちろん、親しみやすい先生ですので、楽しく実習に取り組めています。

やりたいと思ったら、やったほうが良い。やらずに後悔するなら、やるべきだと思う。自分は会社に勤めていましたが、そこには自分が本当にやりたいことはなかったので、この先ずっと勤めていくことが想像できませんでした。そのままその会社に勤めていたにしても、やめてほかの会社に勤めたとしても、本当にやりたいことに挑戦しないまま、気持を押し込めて仕事をしても、自分はその仕事を前向きに取り組めないと思いました。
だから思い切って、挑戦しましたし、もし仮にガラスの道でうまくいかず、どこかに就職したとしても、やってみてダメだったという結果が見えたことで、挑戦しなかった場合とは違う、すがすがしい気持ちで次のステップに進めると思いました。
これからの人生を考えると、何らかの仕事について、働いていくと思います。それがほぼ毎日、何十年も続いていくわけですから、自分の人生の中で仕事というものが占める時間は、かなり大きいと思うので、楽しいと感じる仕事であれば、人生がより楽しくなると思います。そう考えると、自分が大学を卒業してなんとなく会社を選んでしまったことは、軽率だったと思います。今は気持ちを新たに、夢に向かって頑張っているところですが、必ずガラスの仕事に就いて、良いものを作りたいと思っています。やりたいという気持ちがあるなら、まず思い切って挑戦すれば良いと思います。
(2008年9月 DECOBI にて)



